本記事では、AIクローラーの概要やWebサイトに与える悪影響、拒否・ブロックの方法などを解説します。
AIクローラーとは、AIがWebサイトのリンクを辿って情報収集や整理を行うツール・プログラムです。
AIクローラーの進化により、検索エンジン(Googleなど)の検索結果の最適化や快適なデータ分析などが期待できます。
しかし、Webサイト運営に悪影響を及ぼす例があり、「拒否・ブロックすべきか」と悩む方もいるでしょう。
AIクローラーを拒否すべきか否かは容易に断言できないため、メリット・デメリットを考慮して、個々のWebサイト運営の方針に合わせて選択しましょう。
目次
AIクローラーとは?
AIクローラーとは、AIがWebサイトを巡回し、情報の収集や整理を行うツール・プログラムです。
- Webサイトを巡回し情報収集等を行う仕組み:クローリング
- Webサイトを巡回するボット:クローラー / スパイダー
従来のクローラー(非AI)は、事前にプログラムした規則に従って単純な情報収集をしていました。
しかし、AIクローラーは機械学習や自然言語処理などの技術を活用し、より高度で複雑な情報収集や解析ができる点が特徴です。
- 機械学習:収集したデータのパターン・規則性を学習する技術
- 自然言語処理:人間が用いる言語を分析・理解・生成する技術
例えば、AIクローラーはWebページのコンテンツを理解し、より関連度の高い情報を抽出したり、感情を分析したりできます。
AIクローラーを活用しているツールの例3選
AIクローラーは、我々の身近なツールでも活用されています。
代表的な例は、以下の3つです。
- 検索エンジン(Google / Bingなど)
- 生成AI(ChatGPT / Geminiなど)
- データ分析ツール(Google Analytics / SEMrushなど)
各ツールでの活用例を詳しく解説します。
検索エンジン(Google / Bingなど)
以下のような検索エンジンでは、検索結果にユーザーの検索意図を満たすWebページを表示するために、AIクローラーの技術が使われています。
- Bing
- Yahoo! JAPAN
各検索エンジンは、「ユーザーが求める情報を掲載したページを検索結果に表示させるか」を重要視しています。
AIクローラーの進化により、ボットがWebページを巡回した際に自然言語処理を用いてコンテンツを分析できるようになりました。
その結果、ユーザーの検索意図と関連が深いページが検索結果の上位に表示されるようになり、優れたユーザー体験を実現しています。
一方で、AIクローラーの技術が発展していなかった時期は、今ほどコンテンツの内容を正確に分析できませんでした。
それ故、ユーザーの検索意図とは関連性が低い以下のようなページが表示されることも多々ありました。
- 検索KWをただ詰め込んだ質の低いページ
- オリジナリティの低いページ
しかし、現在は上記のようなページは検索結果に上位表示されにくくなっています。
今後、AIクローラーの技術がさらに進化すれば、より関連性の低いページは表示されにくくなるでしょう。
生成AI(ChatGPT / Geminiなど)
AIクローラーは、以下のような生成AIツールでも活用されています。
- ChatGPT
- Gemini
- Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)
例えば、ChatGPTなどの対話型AIツールは、事前にAIクローラーが収集した情報を学習し、自然言語処理を用いてユーザーと対話をします。
また、Stable Diffusionなどの画像生成AIツールも同様に、AIクローラーが収集・分析したインターネット上の画像データを学習し、ユーザーの指示通りに画像を生成します。
ただし、各生成AIツールが直接Webサイトを巡回し、学習しているわけではありません。
AIツールの開発者が別のツールやサービスを用いてクローリングを行い、収集した情報を各種AIツールに学習させる流れが一般的です。
データ分析ツール(Google Analytics / SEMrushなど)
以下のようなデータ分析ツールでもAIクローラーの技術が活用されています。
- Google Analytics
- SEMrush(セムラッシュ)
- Ahrefs(エイチレフス)
例えば、Webサイトの競合分析やSEO対策で役立つ「Ahrefs(エイチレフス)」では、AIクローラーがインターネット上のWebページを巡回し、キーワードデータや被リンクデータ、競合サイトなどを調査・分析します。
Ahrefsは、24時間で80億を超えるページを巡回し、15~30分ごとに情報を更新しているようです。
また、Webサイトのアクセス数や流入経路などを分析できる「Google Analytics」では、直接的にAIクローラーが搭載されているわけではありませんが、以下のような関連性があります。
- Googlebot(GoogleのAIツール)がWebサイトを巡回・インデックス
- Webサイトに紐づけたトラッキングコードをGoogle Analyticsが読み込む
- Google AnalyticsにWebサイトの情報が反映される
Googlebotには、以下のような機能があります。
- 重要なページを優先的にクロール
- 重複コンテンツの識別・統合
- スパムやボットを判別
つまり、AIクローラーの活用により、Google Analyticsなどの解析ツールで正確、かつ効率的にデータ分析が実現するのです。
AIクローラーがWebサイトに与える悪影響
AIクローラーはデータの収集・分析や検索順位の最適化に役立ちますが、Webサイト運営者にとって以下の悪影響があります。
- 正確にアクセス解析できなくなる
- オリジナルのコンテンツをAI抽出される
- 情報が漏えいする危険性がある
- SEOに悪影響を及ぼすケースがある
各要素を詳しく解説します。
正確にアクセス解析できなくなる
AIクローラーの発達により、自身のWebサイトのアクセスを正確に解析できなくなる恐れがあります。
AIクローラーが自身のWebサイトを巡回すると、Google Analyticsを含む解析ツールのデータ上は1回のアクセスと判断されます。
しかし、実際は人間のユーザーがWebサイトにアクセスしているわけではないため、Webサイトへの実際のアクセス状況と解析ツールのデータに乖離が生じます。
特に、以下のような場合は、アクセスの少ないページの強化にリソースを注ぐなど、Webサイトの運営方針を誤ってしまうかもしれません。
- AIクローラーの巡回頻度が高い
- Webサイトのアクセス数が少ない
Webサイト運営に大きく支障をきたす場合は、AIクローラーのブロックも視野に入れましょう。
オリジナルのコンテンツをAI抽出される
AIクローラーがWebサイトを巡回すると、自身のオリジナルのコンテンツが抽出されます。
抽出されたデータを生成AIが学習すると、以下のような事態が発生します。
- 対話型AIツールの回答結果に、自身のオリジナルの情報が表示される
- 画像生成AIツールの出力結果に、自身の画像やイラストが反映される
結果、自身のコンテンツの目新しさが減ったり、自分のオリジナル画像に似た特徴の画像が出回ってしまったりするので要注意です。
ただし、自身のオリジナルコンテンツが直接的にAIの生成結果に使われるのではなく、あくまでも学習した情報の一部として使われる点に理解が必要です。
なお、AIクローラーがWebサイトを巡回し、データを抽出する行為を「スクレイピング」と呼びます。
情報が漏えいする危険性がある
AIクローラーが自身のサイトを巡回すると、情報漏えいの危険性があります。
自身のWebサイトで個人情報などの機密情報が公開されていると、AIクローラーに情報を学習され、第三者に知られてしまいます。
とはいえ、AIクローラーが巡回できるのは、一般のユーザーと同じ範囲です。
機密情報にはパスワードやアクセス制限をかけるなど、当然のセキュリティ対策を講じていれば、大きな心配はありません。
設定ミスで誤って個人情報を投稿したなど、Webサイト自体に問題がある場合、被害が大きくなる恐れがあるということです。
SEOに悪影響を及ぼすケースがある
AIクローラーを搭載したツールを活用するユーザーが増えると、SEOに悪影響を及ぼす場合があります。
例えば、Webサイトに投稿するコンテンツをChatGPTなどの生成AIで作成したユーザーがいるとします。
自身のコンテンツに著しく類似したページが投稿され、それが検索結果に上位表示されると、重複したコンテンツとみなされる恐れがあるのです。
重複コンテンツはGoogleからのSEO評価を下げ、Webサイトの検索順位が下がってしまいます。
Webサイトのアクセス数が減り、さらにコンテンツの修正や重複コンテンツ投稿者への削除依頼などで不要な手間が取られてしまいます。
ただし、生成AIの出力結果に自身のコンテンツがそのまま表示されるわけではありません。
一言一句同じ文章が生成される可能性は低いため、「重複コンテンツを作られるかもしれない」という過度な心配は不要です。
AIクローラーがWebサイトに及ぼすメリット
AIクローラーの発達により、Webサイトのアクセス増加に繋がるケースもあります。
例えば、対話型AIツールの出力結果の参照ページに自身のWebサイトが表示されれば、知名度がアップします。
回答結果に興味を持たれたら、継続してWebサイトを訪れてもらえるでしょう。
今後、検索エンジンではなく生成AIを使う方が増加した場合、貴重な流入源となります。
また、GoogleのAIクローラー(Googlebot)のおかげで、コンテンツを適切に把握してもらえる点もメリットです。
ユーザーの役に立つ、質の高いコンテンツを適切に評価してもらえるので、真面目にWebサイトを運営すれば着実に成果に反映されやすくなります。
もし、以下のような小手先のSEO対策ばかりしていると、Webサイトの評価が下がる恐れがあります。
- 過剰にキーワードを詰め込む
- 質の低いコンテンツを大量生産する
- コピーコンテンツ
中・長期的にSEOで評価されるためにも、ユーザーファーストで質の高いコンテンツ制作に注力しましょう。
AIクローラーはブロックすべき?
AIクローラーはWebサイト運営にとってメリット・デメリットがあるツールです。
AIクローラーをブロック(自身のWebサイトを巡回させなくする対策)すべきか否かは、簡単に断言できません。
先述した通り、AIクローラーを活用した生成AIを使ったユーザーが自身のWebサイトに流入する場合があります。
今後、生成AIの普及率が高まり、Googleなどの検索エンジンを使う層が減る可能性が考えられます。
その場合、生成AIからのアクセスが貴重な流入源の一つとなるでしょう。
一方で、AIクローラーには、正確なアクセス解析ができなかったり、オリジナルコンテンツを学習されてしまうなどの注意点もあります。
AIクローラーの種類やWebサイトの方向性を考慮し、個別にブロックすべきか否かを判断しましょう。
AIクローラーを拒否・ブロックする方法
AIクローラーを拒否・ブロックする方法は、大きく以下の2つとなります。
- robots.txtでブロック
- IPアドレスを指定してブロック
robots.txtとは、クローラーに対して「Webサイトで巡回していいページ・避けるべきページ」を指示するファイルです。
特定のAIクローラーを拒否したrobots.txtをWebサイトのルートディレクトリに配置することで、AIによる巡回を制限できます。
robots.txtを用いる方法は、完全にクロールを拒否するわけではなく、あくまでも協力を依頼すると考えてください。
また、AIクローラーのIPアドレスをWebサーバー側の設定で拒否する方法もあります。
robots.txtとは異なり、クローラーのアクセスを完全に遮断できます。
AIクローラーを拒否・ブロックする方法については「AIクローラーをブロックする方法」をご覧ください。
AIクローラーに関するよくある質問

ここでは、AIクローラーに関するよくある質問に回答します。
- 効率的に情報収集できるおすすめのAIクローラーサービスは?
- 有料コンテンツはAIクローラーをブロックすべき?
効率的に情報収集できるおすすめのAIクローラーサービスは?
効率的に情報収集できるAIクローラーサービスのおすすめは、以下の2つです。
SynCrawlerは、自動でWeb上からデータ収集を行い、文章解析を経て情報の整理・データベース化できます。
Webサイトだけでなく、SNSや口コミ情報、画像ファイルまで対応しています。
Octoparseは人気サイト向けのテンプレートを使って、簡単にデータを収集できるAIクローラーサービスです。
コーディング不要で、表示された指示に従って設定するだけで、自動的に情報収集ができます。
有料コンテンツはAIクローラーをブロックすべき?
Webサイトに有料コンテンツを掲載している場合でも、AIクローラーをブロックすべきとはいえません。
先述した通り、AIクローラーは一般的なユーザーがアクセスできないページには、同様にアクセスできません。
つまり、ログイン認証などのアクセス制限を施して有料コンテンツのページを保護すれば、勝手に有料情報を抽出される心配は不要です。
有料部分のコンテンツをAIクローラーに抽出されないように、Webサイトを作成することが大切です。
まとめ
本記事では、AIクローラーの概要やWebサイトに与える悪影響、拒否・ブロックの判断目安や方法などを解説しました。
Webサイトを巡回して情報を収集・整理するAIクローラーは、検索エンジンや生成AIなど、さまざまなツールで活用されています。
AIクローラーの発達により、Webサイトのコンテンツを正確に把握してもらえたり、生成AIのユーザー体験が向上したりするなどのメリットがあります。
しかし、Webサイトの運営者にとっては、正確にアクセス解析できない、オリジナルコンテンツが学習されてしまうなどの悪影響があります。
ただし、生成AIからの流入が見込めるメリットもあるので、一概に拒否・ブロックすべきとはいえません。
AIクローラーの特徴を把握したうえで、ブロックすべきか否かを適切に判断しましょう。
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